成果主義が、正規雇用を請負化して雇用の融解を引き起こし始めていることは、すでにみたとおりであるが、男女間の格差を押し広げて、女性の非正規雇用化を促進するインパクトにもなりうる。なぜなら、それはこれまでの男女間の格差をそのままにして業績を問うために、「補助的な仕事」と熔印を押される、数字に直結しない仕事に塩漬けされてきた女性にとっては圧倒的に不利になるからである。新しい制度が待遇を決める物差しとする「能力」や「業績」は、性差別を隠蔽するに十分なものなのである。
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教育を受ける機会に恵まれ、差別や暴力にさらされずにすんだ(つまり潜在的能力を顕在化させることに努力を振り向けることのできた)ごくわずかな女性だけが、そうした制度から利益を受けることができる。反面、それまでの格差の要因をなした「差別」は、「能力」や「業績」に置き換えられて、その結果、不利益を受ける女性はいっそう自分を責めなければならなくなった。とくに、妊娠・出産・子育て・介護による不就労はそれだけで査定に不利に響く。働き方のスタイルがいまだに「男性モデル」で、青天井の時間外休日労働と不払い労働を生み出してきた仕組みにはまったくメスが入れられないまま、能力や業績が問われるから、たまらない。いまや、週六〇時間以上働く労働者は、六〇〇万人にのぼり(二〇〇四年労働力調査)、これが子育て真っ最中の世代の労働者に集中する傾向にある。長時間過密労働を加速し、妊娠・出産・子育ての必要といった人間としての営みが不利な取り扱いにつながったりする職場の現状を前に、正社員のなかにも非婚や出産拒否が増えている。